私が好きな山頭火の句


昭和4年秋(48歳)  熊本県、阿蘇にて

    
 岩かげまさしく水があふれている
           
   うしろ姿のしぐれてゆくか 

吠えつつ犬が村はづれまで送ってくれた
     
   宿までかまきりついてきたか  
  
阿蘇がなつかしいりんどうの花
     
     笠にぽっとり椿だった
     別れてきた道がまっすぐ         猫も一緒に欠伸するか
   こんなにうまい水があふれている   日が落ちかかるその山は祖母山
    
   酔うてこほろぎと寝ていたよ    
    
    だまって今日の草鞋穿く   
  振り返れば香春があった      ここちようねる今宵は由布岳の下  
    お茶を下さる真黒な手で       窓あけた月がひょっこり
  私は酒が好きであり水もまた好きである。
昨日までは酒が水より好きであった。今日は酒が好き
な程度に於いて水も好きである。
明日は水が酒より好きになるかも知れない
    けふも一日風をあるいてきた
    
  食べるだけはいただいた雨となり  
    
  しみじみたべる飯ばかりの飯である

投げ与えられた一銭のひかりだ
故郷の人と話したのも夢か
まだ奥に一家ある牛をひいていく
つきあたってまがれば風
別れの畳まで朝日さしこむ
重たいドアあけてだれもいない
けふもあたたかい長崎の水
ゆっくり湯に浸り沈丁花
街の雑音もとおり抜けてきた
跣の子供らがおじぎしてくれた
あの汽車も故郷のほうへ音たかく
旅の疲れの腹がなります
あふれる朝湯のしづけさにひたる
  さくらがさいて旅人である
巡査が威張る春風が吹く
さみしさ熱い湯に入る

学校も役場も寺もさいたさいた
水音を踏んで立ち上がる
夕闇の猫が体をすりよせる
それは私の顔だった鏡つめたく


山頭火 FILE

まだまだ編集します。また見にきて下さいね。

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